協定とガイドライン

1)協定・ガイドライン・運営委員会※の関係 (建築協定の例)

建築基準法等 建物建築に関する法令、政令等
建築協定 法令に基づき、建築基準法では満たせない地域の要求に対応するもの
ガイドライン 協定を順守するための具体的な仕様や数値、指針等を定めたもの
運営委員会 協定に基づき構成され、協定とガイドライン違反の有無を審査する機関

※正式名称は「ハウステンボス・ワッセナー地区建築協定・緑化協定運営委員会」ですが、協定運営委員会または運営委員会と略して呼称する場合があります。

2)建築協定・緑化協定のポイント

⑴ 物件取得時に全員が了承済み

 協定は私たちが直接調印してはいませんが、物件取得時に協定の存在とすべてのオーナーが協定を順守することを承諾しています。(戸建て130戸、マンション60戸)

⑵ 改変は不可能

 協定の改変には190戸オーナー全員の同意が必要ですので、実質的には改変することはできません。

⑶ 厳しい罰則規定がある

 違反者に対しては、工事差し止め、是正措置、裁判提訴などの措置を取るよう、運営委員会に対して命じられています。

⑷ 最も大事な条文は以下の二つ

建築協定第7条
建築物及び工作物(建築物以外の工作物をいい、仮設の工作物、地下に設ける工作物及びその他地盤面に敷設する工作物をいう)の外観の意匠、形態、色彩等の変更については、建築物等の譲渡地点における有姿を尊重するとともにハウステンボス・ワッセナー地区全体との調和を図り美観を損なわない委員会の承認したものに限るものとする。但し、承認にあたっては委員会は、委員会の指名する建築等専門技術者の指導・助言を受けるものとする。
緑化協定第6条1
協定者は、この協定の目的が達せられるよう樹木、芝生(以下「樹木等」という)の維持管理に努めなければならない。

 両協定は改変不可のいわばワッセナーの憲法のようなものです。建築に関してはほとんどの事例が「外観の意匠、形態、色彩等の変更」を伴う可能性がありますので、委員会の事前承認が必要となります。また、樹木や芝の管理を怠ることは協定順守の観点からは問題があります。

3)建築協定ガイドライン

 建築協定に基づいて、細部のデザインや仕様に関わる決め事を行っているのがガイドラインです。2006年に、初期ワッセナーを設計した㈱日本設計の手により作成されたデザインガイドライン(旧ガイドライン)と、2016年に協定運営委員会が㈱Dアート企画の監修のもと作成したガイドライン(新ガイドライン)の二つがあり、ともに2017年の総会において承認され、以降正式なワッセナーの建築に関するルールとして施行されています。ワッセナーの家屋を修繕したい、敷地内に新しく建築物や工作物を作りたい、そんな場合にはこの新旧ガイドラインに照らしてプランを練って頂き、委員会に建築申請を出して頂く必要があります。

4)緑化協定ガイドライン

 緑もまた景観の重要な要素です。ワッセナーの通りの名前は全部花の名前です。各街区の街路樹も種類の異なる樹木で個性と統一感の両方が満たされるように設計されています。ほどよく緑が映える街になるように、協定のいう「樹木等の維持管理」に関する規定を定めているものが緑化協定ガイドラインです。
  庭のデザインを変えたい。植栽を変更したい。増改築の結果、緑が減ってしまう。このような場合には、委員会に緑化申請を出して頂く必要があります。

5)協定運営委員会

 建築協定には「外観の意匠、形態、色彩等の変更については、(中略)ハウステンボス・ワッセナー地区全体との調和を図り美観を損なわない委員会の承認したものに限る」とあります。調和や美観を委員の主観に委ねるのではなく、ある程度共通の認識に基づくよう、以下のように運営されています。

⑴ できるだけ細かなガイドラインを作る

 委員会の審査は協定やガイドラインに沿っているかどうかです。該当するガイドラインがない場合は事例を想定して、あるいは事例が起きたことをきっかけに、常にガイドラインを追加・改定して総会での承認を得ていきます。

⑵ 「調和と美観」(美しさ)の基準は、オランダらしさ、調和、高級感

 ワッセナーに共通する欧州の美意識に基づき、オランダ(欧州)らしさがあるか、周りや全体との調和がとれているか、ハイグレード感(高級感)があるかどうかを共通の判断基準とします。

⑶ 景観に影響が大きい場合は専門家の意見を仰ぐ

 ガイドラインで意匠等を規定している場合を除き、新築・増改築・大型の工作物の設置など景観への影響が大きいと判断される場合は、専門家の意見を判定の拠り所とします。

 運営委員の任期は原則1年で、立候補制で誰もが平等に委員になれます。委員が変わっても運営委員会の判定がその都度恣意的に変わらないよう、協定やガイドラインといった明文化した規則に照らし、必要に応じて専門家の意見を求めながら審査判定を行っていくものです。